※本記事の作成にあたり、文章の構成・推敲等に生成AIの支援を受けています。記載されている法令や制度等の内容については、執筆時点の情報を基に筆者自身が責任を持って確認・監修を行っております。
ご家族を亡くされた直後は、悲しみに向き合う間もなく、葬儀や役所の手続きに追われる方が大半です。「何から手をつければよいのか」「いつまでに何をしないといけないのか」――ご相談の現場でも、まずこの疑問にぶつかる方が多くいらっしゃいます。
実は、相続に関わる手続きには、法律で明確な期限が定められているものがいくつもあります。期限を意識せずに進めると、本来受けられたはずの控除が使えなくなったり、過料の対象になったりすることもあります。
この記事では、相続発生後のお手続きを「期限」を軸に整理してご紹介します。「いつまでに何をすればよいのか」の全体像を、ご一緒に押さえていきましょう。
1.期限の全体像 ― 6つの節目を押さえる
相続発生後のお手続きには、大きく6つの節目があります。
- 7日以内:死亡届の提出(戸籍法第86条)
- 14日以内:世帯主変更・健康保険・介護保険の資格喪失届など
- 3か月以内:相続放棄・限定承認の申述(民法第915条第1項)
- 4か月以内:亡くなった方の所得税の準確定申告(所得税法第124条・第125条)
- 10か月以内:相続税の申告・納付(相続税法第27条第1項)
- 3年以内:相続登記の申請(不動産登記法第76条の2)
ご覧のとおり、最初の14日と、その後の3か月から10か月にかけてが、特に動きが集中する時期です。それぞれの期限について、順に見ていきます。
2.7日~14日以内 ― 役所を中心としたお手続き
最初の段階は、市区町村役場を中心としたお手続きです。
死亡届と火葬許可証
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に提出が必要です(戸籍法第86条)。提出先は、亡くなった方の死亡地・本籍地・届出人の所在地のいずれかの市区町村役場です。
実務上は、葬儀社が死亡届の提出と火葬許可証の取得を代行してくれることが多いため、ご遺族ご自身が窓口に行くケースはそれほど多くありません。とはいえ、医師に発行してもらう死亡診断書と一体になっている書類ですので、原本のコピーを必ず取っておくことをおすすめします。後の保険金請求や年金手続きで何度も必要になります。
世帯主変更・健康保険・介護保険
亡くなった方が世帯主だった場合の世帯主変更届、健康保険(国民健康保険・後期高齢者医療制度)の資格喪失届、介護保険の資格喪失届は、いずれも14日以内が原則です。
これらは多くの市区町村で「おくやみ窓口」のような形で、関連手続きをまとめて案内してもらえるようになっています。手続き案内図を渡してもらえたり、必要な課の職員の方が順番に窓口に来てくださったりするケースもあります。一度に済ませられる手続きはまとめて済ませる、というのがご遺族の負担軽減につながります。
葬祭費・埋葬料の請求 ― 忘れずに
健康保険関連で見落とされがちなのが、葬祭費(国民健康保険・後期高齢者医療制度)や埋葬料(健康保険等の被用者保険)の請求です。市区町村や保険者によって金額は異なりますが、おおむね数万円程度が支給されます(国民健康保険法第58条、健康保険法第100条等)。
申請には2年の時効があります(国民健康保険法第110条、健康保険法第193条)。資格喪失届と一緒に窓口で案内されることが多いのですが、案内が漏れているケースもありますので、ご自身でも忘れず確認されることをおすすめします。
未支給年金・遺族年金 ― 期限ではないが早めに
ここから先は、厳密な「14日以内」の期限があるわけではありませんが、早めに動いた方がよい手続きです。
亡くなった方が年金を受給されていた場合、最終回までの未支給分(未支給年金)を、ご遺族がご自身の権利として請求できます(国民年金法第19条・厚生年金保険法第37条)。また、要件を満たすご遺族には、遺族年金が支給されます。
これらは相続財産ではなくご遺族固有の権利ですので、相続放棄をされた方でも受け取ることができます。詳しくは別記事「相続放棄と死亡保険金・年金 ― 受け取れる権利と税金面の注意点」をご参照ください。
未支給年金には5年の時効があります(国民年金法第102条第1項等)。落ち着いてからで構いませんが、忘れないうちに動かれることをおすすめします。
なお、年金受給者がお亡くなりになった場合、本来は「年金受給権者死亡届」の提出が必要です(国民年金法第105条等)。ただし、亡くなった方のマイナンバーが日本年金機構に収録されていれば、原則としてこの届出は省略できます。多くの方は省略可能と思われますが、ご不明な場合は念のため年金事務所にご確認ください。届出が必要な場合の期限は、厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内です。
3.生活への影響 ― 口座凍結への備え
期限のあるお手続きとは少し性質が異なりますが、相続発生直後にご遺族が直面しやすいのが、亡くなった方の金融機関口座の凍結です。
金融機関はどのように死亡を知るのか
ご相談の現場で「金融機関は、どうやって相続が始まったことを知るのですか?」とよく聞かれます。実は金融機関が能動的に死亡を把握する仕組みは基本的になく、多くの場合、ご遺族からの届出によって把握されています。新聞のお悔やみ欄や、支店担当者が地域で耳にして把握するケースもあります。
ご遺族から届出をすると、その時点で口座は凍結され、入出金ができなくなります。公共料金・家賃・住宅ローン等の引き落としが亡くなった方の口座で行われていた場合、引き落としが止まってしまい、ご遺族が立て替えなければならない事態が生じます。
「凍結前に下ろしておく」は慎重に
「届出をしなければ凍結されないのだから、亡くなった直後にまとめて下ろしておけば…」とお考えになる方もいらっしゃいます。お気持ちは分かるのですが、いくつか気をつけたい点があります。
一つは、相続放棄との関係です。相続人が預貯金を引き出して使ってしまうと、相続を単純承認したものとみなされる場合があります(民法第921条第1号)。後から多額の借金が見つかっても、相続放棄が難しくなる可能性が出てきます。
もう一つは、他の相続人との関係です。預貯金は相続開始の時点で共同相続人全員のものになりますので、一人の判断で引き出すと、後の遺産分割協議で行き違いが生じやすくなります。
加えて、相続開始の前後の不自然な預金の動きは、相続税の税務調査で説明を求められることもあります。「下ろせばすべて解決」というわけにはいかないのが実情です。
仮払い制度という選択肢 ― 民法第909条の2
こうした場面のために、葬儀費用などの当座の資金が必要なときは、相続人が単独で一定額を払い戻せる制度が用意されています(民法第909条の2)。
払戻しを受けられる金額は、金融機関ごとに最大150万円までです(各相続人の法定相続分等に応じて計算されますが、上限が150万円です)。複数の金融機関に口座がある場合は、それぞれから個別に払戻しを受けられます。
単独で請求できる制度ですが、被相続人の戸籍など必要書類はそれなりにあります。戸籍収集と並行して進めていくイメージです。
公共料金等の引き落とし口座の変更
凍結前にできる現実的な備えとしては、公共料金等の引き落とし口座を、亡くなった方の口座から別の口座へ変更しておくことです。落ち着いてからで構いませんが、忘れずに進めてください。
4.3か月以内 ― 相続放棄を判断する期間
ここから、相続そのものに関わる重要な期限が登場します。
相続放棄・限定承認の申述期限
相続人の方は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続を承認するか放棄するかを判断する必要があります(民法第915条第1項)。
期限内に何もしないと、原則として単純承認(プラスもマイナスもすべて引き継ぐ)をしたものとみなされます。被相続人に多額の借金があった場合でも、3か月を過ぎてしまうと、原則としてそれを引き継がなければなりません。
3か月で行うべき準備
この3か月の間にやらなければならないことは、実はかなりたくさんあります。
- 相続人の確定:亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍を集め、相続人を正確に把握する
- 相続財産の調査:預貯金・不動産・有価証券・借金など、プラスとマイナスの両方の財産を洗い出す
- 承認か放棄かの判断:プラス財産とマイナス財産のバランスを見て決める
特に戸籍収集は、想像以上に時間がかかる作業です。被相続人が転籍を繰り返していたり、本籍地が遠方だったりすると、複数の市区町村に請求をかけることになります。令和6年3月から最寄りの市区町村でまとめて請求できる広域交付制度が始まりましたが、それでも遡る量が多いと、窓口で数時間待たされるケースも珍しくありません。
なお、3か月以内に判断ができない事情がある場合は、家庭裁判所に「熟慮期間の伸長」を申し立てることができます(民法第915条第1項ただし書)。「とにかく3か月以内に何らかの判断を」と慌てるよりも、申立てを視野に入れて専門家に相談された方が、結果的に冷静な判断ができます。
相続放棄については、別記事「相続放棄と死亡保険金・年金 ― 受け取れる権利と税金面の注意点」で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
5.4か月以内 ― 亡くなった方の所得税の準確定申告
4か月目に登場するのが、準確定申告です。少しなじみの薄い手続きかもしれませんが、押さえておきたい論点です。
準確定申告とは
亡くなった方の「その年の1月1日から亡くなった日まで」の所得について、相続人が代わりに行う確定申告のことを「準確定申告」といいます。期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です(所得税法第124条・第125条)。
「申告義務がある方」と「申告すれば還付がある方」
準確定申告には、2つのパターンがあります。
(1) 申告義務がある方
生前にご自身で確定申告をされていた方は、準確定申告も義務です。代表例は次のとおりです。
- 個人事業主の方(事業所得がある方)
- 不動産所得がある方(賃貸物件のオーナーなど)
- 公的年金収入が400万円を超える方
- 給与所得が2,000万円を超える方
- 譲渡所得(不動産・株式等の売却益)があった方 など
(2) 申告すれば還付があるかもしれない方
申告義務はないけれど、申告すれば源泉徴収された税金が戻ってくる可能性があるケースです。サラリーマンや年金生活者の方は、通常は年末調整や「年金400万円以下ルール」で確定申告が不要ですが、年の途中で亡くなると年末調整が行われません。結果として、各種控除が反映されていない状態になっているケースが多いのです。
典型的なのは、多額の医療費を支払っていた場合です。医療費控除の申告をすれば、税金が還付される可能性があります。
注意したいのは、医療費控除の対象になるのは「亡くなる日までにご本人が支払った医療費」だという点です。亡くなった後にご家族が支払った医療費は、被相続人の医療費控除の対象にはなりませんのでご注意ください(※支払ったご家族ご自身の医療費控除や、相続税の債務控除の対象になる可能性があります)。
税理士へのご相談を
準確定申告は税務分野の手続きですので、具体的な計算や申告書の作成は税理士の独占業務になります(税理士法第52条)。
「亡くなった方が確定申告をされていたか分からない」という場合は、まず税務署で過去の申告状況を確認していただくか、税理士にご相談されることをおすすめします。「医療費が多くかかっていた」「年金以外の収入があった」といったケースでは、特に確認の価値があります。
6.10か月以内 ― 遺産分割と相続税の申告
10か月目に控えているのが、相続税の申告期限です。
相続税の申告期限
相続税の申告と納付の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税法第27条第1項)。
ただし、相続税はすべての相続で発生するわけではありません。相続財産の合計額が「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」(基礎控除額)の範囲内であれば、申告も納税も不要です(相続税法第15条第1項)。
遺産分割が間に合わないと不利になる
ここで意識しておきたいのは、相続税の申告期限までに遺産分割協議が整っていることの大切さです。
相続税には、配偶者の税額軽減(相続税法第19条の2)や、小規模宅地等の特例(租税特別措置法第69条の4)など、税負担を大きく軽減してくれる制度があります。ところが、これらの制度は原則として遺産分割が確定していることが適用要件になっています。
申告期限までに分割がまとまらない場合は、いったん未分割のまま申告(法定相続分で按分)することになり、これらの特例が使えません。後日「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出して期限内に分割を完了させれば、特例を遡って適用できる救済策はありますが、手続きが煩雑になりますので、できる限り10か月以内の協議完了を目指していただきたいところです。
認知症の相続人がいる場合は要注意
実務でしばしば直面するのが、相続人の中に認知症等で判断能力に支援が必要な方がいらっしゃるケースです。このような場合、その方を含めた遺産分割協議は、そのままでは有効に成立しません。家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立て、後見人が本人に代わって協議に参加する必要があります。
問題は、後見人の選任には申立てから審判まで一定の期間(おおむね数か月)がかかるということです。10か月という期限を考えると、「相続が発生してから後見の申立てを検討する」では遅いケースも出てきます。
該当する方がいらっしゃる場合は、できるだけ早い段階で家庭裁判所への申立てを検討されることをお勧めします。私自身、専門職後見人として被後見人の方に代わって遺産分割協議に関わることがありますが、時間的な余裕は本当に大切だと感じます。
遺産分割協議書の作成については、別記事「遺産分割協議書の作成 ― 実務で押さえておきたいポイントと作成例」で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
税理士へのご相談を
相続税の申告も、税務分野の手続きですので、具体的な計算や申告書の作成は税理士の独占業務になります(税理士法第52条)。
相続税の計算には、不動産の評価(路線価方式や倍率方式)、生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)、小規模宅地等の特例など、複数の規定が絡み合います。「基礎控除を超えるかどうか微妙」というケースこそ、早めに税理士にご相談されることをおすすめします。申告の要否を判断するには、財産の正確な評価が前提になるためです。
7.3年以内 ― 相続登記の義務化
最後に、近年新たに加わった重要な期限が、相続登記です。
相続登記の申請義務化(令和6年4月施行)
令和6年4月1日から、不動産を相続で取得した方は、相続の開始および所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務化されました(不動産登記法第76条の2)。
正当な理由なく期限内に登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
この義務化は、施行日より前に発生した相続にも適用される点に注意が必要です。ただし、施行日前の相続については、施行日から3年以内(令和9年3月31日まで)の猶予期間が設けられています。「うちは古い相続だから関係ない」とは言えなくなりましたので、まだ登記が済んでいない不動産がある方は、早めに動き始めることをおすすめします。
相続人申告登記という暫定的な選択肢
遺産分割協議がまとまらない場合でも、「相続人申告登記」という簡易な制度を利用すれば、ひとまず登記義務を果たしたものとみなされます。
ただし、これはあくまで暫定的な措置です。最終的には、遺産分割に基づいた本来の相続登記が必要になります。「とりあえずの応急処置」とご理解ください。
なお、登記実務そのものは司法書士の専門業務になりますので、当事務所では連携している司法書士の先生におつなぎする形でサポートしています。
8.実務で気をつけたいポイント
最後に、ご相談の現場で気をつけたいポイントを、いくつかご紹介しておきます。
戸籍収集に想定以上の時間がかかる
先ほども触れましたが、戸籍の収集はとにかく時間がかかります。被相続人が複数回の転籍をされていたり、改製原戸籍を遡る必要があったりすると、3か月の熟慮期間があっという間に過ぎてしまうこともあります。早めに着手することをお勧めします。
相続人の中に判断能力の支援が必要な方がいる
これも先ほど触れた通りです。認知症の方、知的障害や精神障害をお持ちの方が相続人の中にいらっしゃる場合は、成年後見の申立てを早めに検討してください。
遺言書の検認を経ずに開封してしまう
無料相談会などで「遺言書を見つけても、その場で開封しないでくださいね」とお伝えすると、「えっ、そうなんですか」と驚かれる方が少なくありません。意外と知られていないルールです。
ご自宅で自筆の遺言書(公正証書遺言・法務局保管制度を利用していないもの)を見つけた場合、その場で開封してはいけません(民法第1004条第3項)。家庭裁判所での「検認」手続きを経る必要があります。開封してしまっても遺言書そのものが無効になるわけではありませんが、5万円以下の過料の対象になりますし、後の手続きが複雑になります。
共通する大切なポイント ― 早めに動き出す
そして、これらすべてに共通する大切なポイントが、「早めに動き出す」ということです。3か月・4か月・10か月という期限は、聞いてみると意外と短いものです。「もう少ししてから」と思っているうちに、選択肢が狭まってしまうことがあります。何か気になることがあれば、早い段階で専門家にご相談されることをおすすめします。
まとめ ― 全体像を押さえて、慌てずに
相続発生後のお手続きを、期限を軸に整理してみました。最後に、もう一度全体像を振り返ります。
- 7日以内:死亡届の提出
- 14日以内:世帯主変更・健康保険・介護保険の資格喪失届
- 3か月以内:相続放棄・限定承認の判断
- 4か月以内:亡くなった方の所得税の準確定申告
- 10か月以内:相続税の申告・納付(該当する場合)
- 3年以内:相続登記の申請
「全部やらなければいけないのか」と不安に思われるかもしれませんが、すべてのご家庭で全項目が必要になるわけではありません。たとえば、相続税は基礎控除を超える場合のみですし、準確定申告は亡くなった方の所得状況によります。
当事務所では、お手続きの全体像を整理したチェックリストもご用意しています。状況の整理にぜひご活用ください。
そして、もし「一人ではとても抱えきれない」「平日に役所や金融機関に行く時間が取れない」と感じられたら、どうぞ専門家の力をお借りください。私自身、ご相談者の方の負担が少しでも軽くなるよう、丁寧にサポートしてまいります。
今回はここまでとなります。最後まで読んでいただきありがとうございました。
当事務所では、障害年金のご請求や成年後見、遺言・相続といった「人生の転機」に関わる手続きをサポートしています。ブログを読んで少しでも気になることやご不安なことがありましたら、どうぞお気軽にご連絡ください。
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