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社会保険労務士・行政書士の宮腰です。ものを書くのが好きで始めました。マイペースで投稿していきますので、よろしくお願いいたします。

2026年5月6日水曜日

相続放棄と死亡保険金・年金 ― 受け取れる権利と税金面の注意点

※本記事の作成にあたり、文章の構成・推敲等に生成AIの支援を受けています。記載されている法令や制度等の内容については、執筆時点の情報を基に筆者自身が責任を持って確認・監修を行っております。

「相続放棄をした人は、死亡保険金を受け取ることができるのでしょうか」――。実務の現場でも、ご相談の中でしばしば寄せられるご質問の一つです。

結論から申し上げますと、相続放棄をしても、死亡保険金は受け取れます。ただし、相続放棄をしていない場合と比べて、税金面で不利になる可能性があります。

この記事では、まず死亡保険金が受け取れる理由を整理し、次に税金面の注意点について解説します。あわせて、相続放棄との関係でご質問の多い未支給年金・遺族年金についても触れます。なお本記事では、ご家族など特定の方が受取人に指定されているケース(最も典型的な形)を前提にお話しします。

死亡保険金が受け取れる理由 ― 受取人固有の財産だから

相続放棄をしても死亡保険金が受け取れる理由は、シンプルです。死亡保険金は、亡くなった方の財産(相続財産)ではなく、受取人ご自身の固有の財産だからです。

これは、保険契約に基づいて、受取人が保険会社に対して直接、保険金請求権を取得するという仕組みに由来します。判例でも、受取人が指定されている死亡保険金は、原則として受取人の固有の財産であり、相続財産には含まれないものとされています(最判昭和40年2月2日)。

受取人固有の財産ですから、そもそも相続の対象になりません。相続放棄をしようがしまいが、受け取れることに変わりはないわけです。同じ理由で、死亡保険金は遺産分割協議の対象にもならず、原則として遺産分割協議書にも記載しません。

ただし、事業承継の場面などでは、後継者(たとえばご長男)に事業用資産を集中して相続させる代わりに、他のご家族へ代償金を支払う取り決めを、遺産分割協議書に盛り込むことがあります。後継者が受け取った死亡保険金を、その代償金の原資として活用する、という使い方は実務でもよく見られる形です。死亡保険金そのものが相続財産になるわけではありませんが、相続人間のバランスを取るための工夫として、知っておかれると役立つかと思います。

なお、保険契約によっては、受取人が「被保険者本人(亡くなった方ご自身)」となっているケースもあります。たとえば医療保険の入院給付金や手術給付金などは、被保険者ご本人が受け取る前提で設計されているのが一般的です。請求しないままお亡くなりになった場合、これらの給付金請求権は相続財産に含まれますので、相続放棄をすると受け取れなくなります。ご自身が加入されている保険の受取人欄が誰になっているか、一度ご確認いただくと安心です。

税金面では「相続財産とみなされる」

ここからが大切なポイントです。死亡保険金は受取人固有の財産でありながら、税金の世界では扱いが変わります。

相続税法では、死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります(相続税法第3条第1項第1号)。受取人が誰であっても、保険料を被相続人が負担していたような典型的なケースでは、相続税の枠組みで課税されるのが原則です。

なお、契約者・被保険者・受取人の関係によっては、相続税ではなく所得税や贈与税が課されることもあります。本記事では、最も典型的な「契約者=被保険者=亡くなった方/受取人=ご家族」のパターンを前提にお話しします。

相続放棄をすると非課税枠が使えない

死亡保険金には、「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠が用意されています(相続税法第12条第1項第5号)。たとえば法定相続人が3人いれば、1,500万円までは相続税がかかりません。なかなか大きな金額です。

この非課税枠は、後ほど触れる基礎控除(相続税全体の非課税枠)とは別に、死亡保険金にだけ用意された優遇措置です。趣旨は、被相続人の死亡によって経済的基盤を揺るがされるご遺族の生活を支えることにあります。社会保険における遺族年金などと同じく、「残された方の暮らしを守る」という発想が、この優遇の根底にあるわけです。

ところが、この非課税枠の適用を受けられるのは「相続人」に限られています。相続放棄をした方は、初めから相続人でなかったものとみなされますので(民法第939条)、この非課税枠は使えません。

「相続人ではないのだから、相続人向けの非課税枠は使わせない」――そう整理されているとご理解いただければと思います。

なお、非課税枠の計算の元になる「法定相続人の数」自体は、相続放棄がなかったものとして数えます(相続税法第15条第2項)。つまり、放棄者がいても法定相続人の数自体は減りませんが、放棄した本人だけが非課税枠の恩恵を受けられないという構造です。

結果として相続税の計算対象が増える

非課税枠が使えないことの影響は、決して小さくありません。

たとえば、法定相続人が1人で、1,000万円の死亡保険金を受け取るケースで考えてみます。相続人として受け取るのであれば、500万円(500万円 × 法定相続人1人)の非課税枠を控除した残りの500万円だけが、相続税の計算対象になります。一方、相続放棄をして受け取る場合は、非課税枠が使えませんので、1,000万円全額がそのまま計算対象に乗ります。

このように、相続放棄をすると「相続税の計算に含めなければならない財産」が増えるため、結果的に不利になる可能性があるわけです。

ただし、基礎控除に収まれば相続税はかからない

ここまで「相続税の計算対象が増える」という話をしてきましたが、誤解のないよう補足しておきます。

相続税には、「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」という基礎控除(非課税の全体枠)が用意されています(相続税法第15条第1項)。こちらは死亡保険金の非課税枠と違い、すべての相続に共通する大枠の制度です。死亡保険金(みなし相続財産)を含めた相続財産の合計額が、この基礎控除額の範囲内に収まるのであれば、そもそも相続税は発生しません。

「相続放棄をしたから、必ず相続税を払うことになる」というわけではない、という点はぜひ押さえておいてください。具体的な税額の計算や、申告が必要かどうかの判断はケースごとの事情に左右されますので、最終的には税理士にご確認いただくのが安心です。

死亡保険金以外にも「受取人固有の権利」はある ― 未支給年金・遺族年金

ここまで死亡保険金についてお話ししてきましたが、相続放棄との関係で混乱しやすい論点として、年金関係のお話も少し触れておきます。

亡くなった方に関わる年金で、相続放棄との関係でよくご質問をいただくのが、未支給年金遺族年金です。

未支給年金とは、年金受給者がお亡くなりになった際、まだ支払われていない年金のことを指します。たとえば、毎偶数月に2か月分まとめて支払われる仕組みの関係で、亡くなった月の分までの年金が未支給になっていることがあります。

未支給年金については、国民年金法第19条・厚生年金保険法第37条に規定があり、ご遺族(配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹といった一定の範囲のご親族)が、ご自身の固有の権利として請求できるものとされています。相続財産ではありませんので、相続放棄をしても受け取れます。

遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金など)も同様です。これは遺族の方ご自身の固有の権利として法律上発生するもので、相続財産には含まれません。相続放棄をしても受給に影響はありません。

死亡保険金と同じく、「受取人固有の権利」というカテゴリで整理できる、と覚えておいていただくと分かりやすいかと思います。

相続放棄を検討するときに気をつけたいこと

相続放棄は、主に被相続人に多額の負債がある場合などに、相続人がご自身を守るために用いる制度です。死亡保険金の受取人になっている方が、それでもなお相続放棄を選ぶという場面は、さまざまな事情が重なった結果であることがほとんどです。

実務でご相談を受けていて感じるのは、「相続放棄」と「死亡保険金の受け取り」を切り離して考えていない方が意外と多い、ということです。「放棄したら保険金も受け取れなくなるのでは」と心配される方もいれば、逆に「保険金は別物だから税金もかからない」と誤解されている方もいらっしゃいます。

相続放棄は、家庭裁判所への申述という法的な手続きであり、原則として一度行えば撤回できません(民法第919条第1項)。また、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内という期間制限もあります(民法第915条第1項)。

死亡保険金との関係も含めて、相続放棄を選ぶかどうかは慎重に判断する必要があります。ご自身の状況に応じて、専門家に相談しながら検討されることをお勧めします。

なお、ご家族の中に成年後見制度をご利用の方がいらっしゃる場合、後見人による相続放棄の申述や利益相反の問題など、別途気をつけるべき論点があります。このテーマについては、追って別の記事で詳しく取り上げる予定です。

まとめ

相続放棄と死亡保険金の関係を改めて整理すると、次のとおりです。

(1)相続放棄をしても、死亡保険金は受取人固有の財産として受け取れる

(2)税金面では「みなし相続財産」として相続税の対象になる

(3)相続放棄をすると、「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠(遺族の生活保障のための優遇)が使えない

(4)結果として、相続税の計算対象が増えてしまう

(5)ただし、基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)に収まれば、相続税はそもそも発生しない

(6)未支給年金・遺族年金も受取人固有の権利であり、相続放棄をしても受け取れる

「保険金は受け取れるから安心」「税金も別だから関係ない」と早合点せず、相続放棄の判断は税金面まで含めて検討していただきたいと思います。


今回はここまでとなります。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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