※本記事の作成にあたり、文章の構成・推敲等に生成AIの支援を受けています。記載されている法令や制度等の内容については、執筆時点の情報を基に筆者自身が責任を持って確認・監修を行っております。
こんにちは。
先日、ある講演で面白い話を聞きました。「男性は、遺言書を書かない人が多い」というのです。理由がふるっていて、遺言を書くと、その言葉のとおりになって本当に死んでしまう気がする――いわゆる言霊を、どこかで恐れているからだ、と。半分は冗談のような話ですが、言われてみると、なるほどと思うところもあります。
ただ、私はといえば、そんなことを言っている場合ではありませんでした。少し前に大きな病気をしまして、自分の遺言書を書くことにしたのです。今回は、その「自分の遺言書を書いた話」を書いてみます。相変わらず下手の横好きの文章ですが、お付き合いいただければ幸いです。
遺言書を書いた3つの理由
遺言書を書いた理由は、おおきく3つです。
- 大きな病気をしたこと
- 子どもたちがまだ18歳未満であること
- 子どもたちを安心して育てるために、妻に自由に財産を使ってほしいこと
順番にお話しします。
① 大病を患った
私はそこそこの大病をしまして、集中治療室に2週間以上入院していました。コロナ禍のさなかでもあり、ある意味で「拾った命」だったかもしれません。結果として、いまは障害等級3級の障害厚生年金を受給し、定期的に通院を続けています。そうなると、やはり自分の死後のことが、少しだけ心配になってくるのです。
② 子どもたちが18歳未満
子どもたちがまだ18歳未満だと、私が亡くなったあとの遺産分割協議(相続による名義変更の手続き)で、特別代理人の選任が必要になります。親権者である妻も同じ相続人なので、子どもとのあいだで利益が相反するためです。ただでさえ精神的にも金銭的にも大変なときに、この手続きはなかなかの手間です。
③ 妻に自由に使ってほしい
私名義の自宅・土地・預貯金などは、すべて妻に自由に使ってもらい、子どもたちを育てていってほしいと考えています。法律上の名義はともかく、この財産は(たいした額ではありませんが)子どもたちを育てるための、妻との共有財産だと思っているからです。
遺言書がないと困ること
先ほど「特別代理人の選任が必要になる」と書きましたが、ここに大きなポイントがあります。妻に全財産を相続(名義変更)してもらうのは、遺言書がないと難しいのです。
私自身はプライベートでも業務でも経験したことはありませんが、家庭裁判所の実務では一般に、「特別代理人は、その未成年者に不利な内容に同意することはできない。つまり、未成年者の法定相続分は確保しなければならない」と言われています。(※これは法律の条文に明記されているわけではなく、家裁の運用として定着しているものです。)制度としては理解できるのですが、私の希望とは合いません。
遺言書があれば解決する
そこで、遺言書に「全財産を妻に相続させる」と書いておけば、いま述べたような面倒な手続きは不要になります。自筆であろうと公正証書であろうと、遺言書があれば遺産分割協議をしなくてよいので、特別代理人の選任もいらず、妻にスムーズに全財産を相続してもらえます。それを法務局に預け、妻と情報を共有しておけば、ひとまず安心です。(ちなみに、妻は「遺言書を書くこと自体」をひどく嫌がっていましたが……。)
遺留分についての補足
行政書士としてひとつ補足します。「全財産を配偶者に相続させる」という遺言は法的に有効ですが、子どもたちには遺留分(法律で保障された最低限の取り分)を請求する権利が残ります。遺留分を侵害する内容の遺言でも、遺言そのものが無効になるわけではなく、侵害された人が「遺留分侵害額請求」をして初めて問題になる、という仕組みです。
我が家の場合、子どもたちはまだ未成年ですし、そもそも妻が子どもたちのために財産を使う前提ですから、現実に遺留分が問題になることはまず考えにくい。とはいえ、同じような遺言を検討される方は、遺留分という制度があることは頭の片隅に入れておいたほうがよいかもしれません。
今回の遺言書の中身
参考までに、今回の遺言書の概要をお伝えすると――相続財産は、不動産(住宅ローンの残りがたっぷりありますが、団体信用生命保険(団信)に加入しているので、私が亡くなれば残債は保険で弁済されます)と、預貯金のみ。相続人は、妻ひとりです。
財産も相続人も少ないので、文面はとてもシンプルで、
「全財産を配偶者である宮腰○○(生年月日)に相続させる。」
これだけです。そういうわけで今のところは、公正証書ではなく自筆証書遺言で書き、近所の法務局に預けています。
法務局の保管制度について一言
法務局の自筆証書遺言書保管制度を使うと、家庭裁判所での検認が不要になるなど、相続手続きがスムーズになります。保管の際に、遺言書保管官が方式面(全文の自書・日付・署名・押印など)を外形的に確認してくれるので、形式の不備で無効になるリスクも減ります。
ただ、注意点もあります。法務局は遺言の「内容」についての相談には応じてくれませんし、保管されたからといって遺言の有効性が保証されるわけでもありません。あくまで「形式チェックと安全な保管」の制度です。内容に不安がある場合は、専門家に相談されることをおすすめします。
自筆と公正証書、どちらを選ぶか
私の場合は、相続人が妻ひとり、財産もシンプルだったので、自筆証書遺言で十分でした。文面も一行で済みます。ですが、次のような場合は、話が変わってきます。
- 相続人が多い(子どもが何人もいる、前の配偶者との子がいる、兄弟姉妹が相続人になる、など)
- 財産の種類が多い(複数の不動産、いくつもの金融機関の口座、有価証券など)
- 分け方が複雑(この不動産は長男に、預貯金は妻に、というように財産ごとに渡す相手を指定する、割合を細かく決める、遺言執行者を定める、など)
こうしたケースでは、自筆だと文面がどんどん複雑になり、書き間違いや言葉足らずが起きやすくなります。法務局の保管制度を使っても、チェックされるのはあくまで形式だけで、「その書き方で、本当に思いどおりに財産が渡るか」という中身までは見てもらえません。あとから「この一文はどう解釈するのか」で相続人がもめたり、最悪の場合は一部が無効になったりすることも起こり得ます。
そうなりそうなときは、公正証書遺言のほうが安心です。公証人が法律のプロとして文面を整えてくれるので無効になりにくく、原本は公証役場が保管するので紛失や改ざんの心配もありません。費用と手間はかかりますが、内容が複雑なほど、その価値は大きくなります。
公正証書遺言のデジタル化
その公正証書遺言ですが、2025年(令和7年)10月から、作成手続きのデジタル化が始まりました。原本が電子データで作成・保管されるようになり、一定の要件を満たせば、自宅などからオンライン(リモート方式)で作成することもできるようになっています。署名も、画面に電子ペンで書く電子署名の方式が使えます。
これまで「公証役場まで足を運ぶのが大変」と感じていた方には、ありがたい変化だと思います。もっとも、事前の打ち合わせや書類集めといった手間まで省けるわけではなく、すべてがオンラインで完結するわけではありません。
そして正直に申し上げると、私自身は、行政書士としての電子署名の準備がまだ整っておらず、このデジタル方式には対応できていません。デジタルでの作成をご希望の場合は、対応している公証役場や専門家にご確認いただくことになります。制度としては始まったばかりですので、私自身も準備を整えながら、これから向き合っていくつもりです。
(なお、自筆証書遺言そのものをパソコンで作る「デジタル遺言制度」のほうは、法務省が検討を進めている段階で、まだ始まっていません。)
おわりに
遺言書を書くというのは、つきつめれば、「自分が亡くなったあとに遺された家族が苦労するか、それとも、自分が元気なうちに少し苦労しておくか」の選択なのだと思います。
冒頭の「書くと死ぬ気がする」という話ではありませんが、書くことを先延ばしにしたくなる気持ちも分かります。それでも、遺された人の手間を、自分が引き受けておく。私はそう考えて、一行の遺言書を書きました。
私自身も、これから財産が増えたり、子どもたちが大人になって状況が変われば、そのときは文面も複雑になりそうなので、公正証書遺言で書き直すつもりです。
※ 本文で触れた制度の法的根拠:未成年の子と親権者の利益相反による特別代理人の選任は民法第826条、遺留分侵害額請求は民法第1046条に基づきます。
今回はここまでとなります。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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