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社会保険労務士・行政書士の宮腰です。ものを書くのが好きで始めました。マイペースで投稿していきますので、よろしくお願いいたします。

2026年5月22日金曜日

兄弟姉妹には遺留分がない ― 子のいないご夫婦が遺言で備えておきたいこと

※本記事の作成にあたり、文章の構成・推敲等に生成AIの支援を受けています。記載されている法令や制度等の内容については、執筆時点の情報を基に筆者自身が責任を持って確認・監修を行っております。

「子どもがいないので、自分が亡くなったとき、配偶者と自分の兄弟姉妹が相続人になる。配偶者にすべての財産を遺したいのだが、どうすればよいか」――お子さまのいないご夫婦から、こうしたご相談をいただくことがあります。

ご相談に来られる方の多くは、すでにご自身で調べて、配偶者だけでなく亡くなった方の兄弟姉妹も相続人になることをご存じです。そのうえで、「では、どうすれば配偶者に確実に遺せるのか」を知りたい、という段階でいらっしゃいます。

結論から申し上げると、生前に遺言書を一通用意しておくだけで、配偶者にすべての財産を遺すことができます。これは、兄弟姉妹には「遺留分」がないために可能になる備えです。

この記事では、兄弟姉妹が相続人になるケースを前提に、なぜ遺言書が有効なのか、そして用意しておかないと残された配偶者にどのような負担が生じるのかを、実務の視点を交えて解説します。なお、遺留分そのものの全体像については別記事で詳しく取り上げていますので、本記事ではお子さまのいないご夫婦のケースに絞ってお話しします。

1.兄弟姉妹が相続人になるのは、どんなときか

すでにご存じの方も多いかと思いますが、念のため、「誰が相続人になるのか」を整理しておきましょう。

配偶者は、常に相続人になります(民法第890条)。そのうえで、配偶者以外の相続人には、次の順位が定められています。

  • 第1順位 子(およびその代襲相続人である孫など)(民法第887条第1項)
  • 第2順位 直系尊属(父母・祖父母など)
  • 第3順位 兄弟姉妹(民法第889条第1項)

ポイントは、上の順位の方が一人でもいれば、下の順位の方は相続人にならないという点です。

つまり、兄弟姉妹が相続人として登場してくるのは、亡くなった方にお子さま・お孫さん(直系卑属)がおらず、さらにご両親・祖父母(直系尊属)もすでに亡くなっている、という場合に限られます。

お子さまのいないご夫婦で、亡くなった方のご両親がすでに他界されている――。このようなケースでは、残された配偶者と、亡くなった方の兄弟姉妹とが、一緒に相続人になるわけです。

2.遺言がないと、配偶者と兄弟姉妹で遺産分割協議

遺言書がない場合、相続財産は法定相続分を目安に分けることになります。配偶者と兄弟姉妹が相続人であるときの法定相続分は、次のとおりです(民法第900条第3号)。

  • 配偶者 4分の3
  • 兄弟姉妹 4分の1(兄弟姉妹が複数いる場合は、この4分の1を人数で均等に分ける)

ここで、「では、この法定相続分どおりに分けるのであれば、わざわざ遺産分割協議をしなくてもよいのでは」と思われるかもしれません。ところが、そう単純にはいきません。

法定相続分は、あくまで「どのくらいの割合で分けるか」という目安にすぎず、「どの財産を、具体的に誰が取得するか」までを決めてくれるわけではないからです。相続が始まると、預貯金も不動産も、いったん相続人全員の共有状態になります(民法第898条・第899条)。この共有状態を解消し、個々の財産の行き先を確定させるには、結局、相続人全員による遺産分割協議が必要になります(民法第907条第1項)。

もう少し具体的に、財産ごとに見てみましょう。

不動産については、法定相続分どおりの「共有名義」で登記するだけであれば、遺産分割協議をしなくても、相続人の一人から手続きすることが可能です。ただし、これはあくまで配偶者と兄弟姉妹(甥・姪)の共有のままになるだけで、配偶者の単独名義になるわけではありません。共有のままだと、その不動産を売却したり担保に入れたりするには、結局、共有者全員の同意が必要になります。配偶者の単独所有にしたいのであれば、遺産分割協議は避けられません。なお、相続登記の手続きそのものは司法書士の専門業務ですので、実際の登記の進め方については司法書士にご相談ください。当事務所でも、連携する司法書士の先生におつなぎしています。

預貯金については、さらに注意が必要です。かつては「預貯金は相続開始と同時に法定相続分どおりに分かれるので、各相続人が単独で払戻しを受けられる」と考えられていました。しかし、最高裁判所の大法廷決定(平成28年12月19日)により、預貯金も遺産分割の対象になると判例が変更されました。現在は、遺産分割が済むまで、配偶者が単独で自分の法定相続分の払戻しを受けることはできず、金融機関は応じてくれません。やはり、相続人全員の関与が必要になるのです。

つまり、「法定相続分どおりに」と考えても、預貯金を解約するにも、不動産を配偶者の名義にするにも、結局は兄弟姉妹(や甥・姪)全員に協力してもらう必要が出てくる、ということです。預貯金を解約するにも、相続人全員の署名・実印(印鑑証明書付き)を求められるのが通常です。

さらに気をつけたいのが、代襲相続です。亡くなった方の兄弟姉妹が、すでに先に亡くなっている場合、その兄弟姉妹のお子さま(つまり、亡くなった方から見て甥・姪)が代わりに相続人になります(民法第889条第2項、第887条第2項の準用)。なお、兄弟姉妹の代襲は一代限りで、甥・姪までです(再代襲はありません)。

残された配偶者が、ふだんあまり面識のない甥・姪の方々にまで連絡を取り、遺産分割協議への協力をお願いしなければならない――。これは、想像する以上に気の重い作業です。

3.兄弟姉妹には「遺留分」がない

ここで鍵になるのが、遺留分です。

遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された、相続財産の最低限の取り分のことをいいます。遺言をもってしても、この取り分を完全に奪うことはできません。たとえば「全財産を配偶者に」という遺言があっても、お子さまがいる相続では、お子さまの遺留分が残ります。

ところが、この遺留分が保障されているのは「兄弟姉妹以外の相続人」に限られています(民法第1042条第1項)。兄弟姉妹には、遺留分がありません。

これが、お子さまのいないご夫婦にとって大きな意味を持ちます。相手が兄弟姉妹(および甥・姪)だけであれば、遺言で「全財産を配偶者に相続させる」と定めておけば、その内容がそのまま実現します。遺留分を理由にあとから取り分を請求される心配がない、ということです。

遺留分の仕組みや、その権利の行使方法(遺留分侵害額請求)については、別記事「法定相続分と遺留分 ― 遺言でも奪えない「最低限の取り分」」で詳しく解説しています。

4.遺言があれば遺産分割協議が要らない ― 残された配偶者を守る

遺言書を用意しておくことの最大の効果は、配偶者がすべてを相続できるという結果そのものだけではありません。遺産分割協議そのものを行う必要がなくなるという点が、実は非常に大きいのです。

配偶者と兄弟姉妹の関係は、「他人とまではいかないけれど、家族とも少し違う」――そうした適度な距離感であることが、現実には少なくありません。仲が悪いわけではなくとも、遺産分割協議のためにわざわざ集まり、ご自宅の相続財産の内容を開示し、署名・押印を一人ずつお願いして回るというのは、残された配偶者にとって決して軽い負担ではないのです。先ほど触れた甥・姪が相手となれば、なおさらです。

私自身、相続の現場でこうした場面に関わる中で感じるのは、ご高齢になられてから配偶者がこの作業を担うことの大変さです。さらに、配偶者ご自身が高齢や病気で判断能力の支援が必要な状態になっていると、その方を含めた遺産分割協議はそのままでは成立せず、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てる必要が出てきます。遺言書が一通あるだけで、こうした事態の多くを避けることができます。

遺言書は、ご自身の希望を残すための道具であると同時に、残された配偶者の負担を軽くしてあげるための備えでもある――。そう考えていただくと、その価値が伝わりやすいかもしれません。

なお、もちろん遺言書で、兄弟姉妹にも一定の財産を遺すと定めることもできます。「すべてを配偶者に」だけが正解ではありません。ご自身のお気持ちとご家族の事情に応じて、自由に設計していただける点も、遺言書の利点です。

あわせて、少し先のことも頭に置いておくとよいかもしれません。配偶者にすべての財産を遺した場合、その配偶者が亡くなったとき(いわゆる二次相続)には、その財産は配偶者側のご親族(配偶者の兄弟姉妹や甥・姪など)へと受け継がれていきます。ご自身の側の兄弟姉妹に戻るわけではありません。「先祖から受け継いだ財産を自分の血筋に残したい」といったお気持ちがある場合は、この点も踏まえて配分を考えておくと、後悔のない設計につながります。

5.遺言書の整え方 ― 方式と、用意するときの工夫

最後に、遺言書をどう用意するかについて、簡単に整理しておきます。遺言書には、主に二つの方式があります。

自筆証書遺言(民法第968条)は、ご自身で全文・日付・氏名を手書きし、押印して作成するものです。手軽でいつでも作成できる反面、方式に不備があると無効になってしまうおそれがあります。なお、平成30年の改正により、財産目録の部分はパソコン等で作成することも認められるようになりました(同条第2項)。

公正証書遺言(民法第969条)は、公証人が関与して作成するものです。費用と手間はかかりますが、方式不備で無効になるリスクが小さく、原本が公証役場で保管されるため、紛失や改ざんの心配もありません。

また、自筆証書遺言については、法務局が原本を預かってくれる自筆証書遺言書保管制度(法務局における遺言書の保管等に関する法律)もあります。紛失・改ざんを防げるうえ、通常の自筆証書遺言で必要になる家庭裁判所の「検認」手続き(民法第1004条)が不要になるという利点があります。

方式とあわせて、中身の工夫として知っておいていただきたいのが、予備的な定めです。「全財産を配偶者に相続させる」という遺言は、その配偶者が遺言者より先に(あるいは同時に)亡くなっていた場合には、その部分が効力を持たなくなってしまいます。すると、せっかく遺言書を用意していても、結局は兄弟姉妹が相続人に戻ってしまうのです。お子さまのいないご夫婦は、おたがいの年齢が近いことも多く、どちらが先になるかは誰にも分かりません。そこで、「もし配偶者が先に亡くなっていた場合には、〇〇に相続させる(遺贈する)」という予備的な条項をあわせて書いておくと、こうした事態にも備えられます。

そして、見落とされがちですが大切なのが、遺言執行者の指定です(民法第1006条)。遺言執行者を定めておくことで、その人が中心となって預金の解約や名義変更などの手続きを進められるようになり、相続がよりスムーズに運びます。

このとき、遺言執行者を誰にするかも、一度考えてみる価値があります。残された配偶者ご自身を執行者に指定することもできますが、ご高齢になってから、お一人で銀行や役所を回って手続きを進めるのは、それなりの負担になります。残された方の負担を軽くするという観点からは、信頼できる専門家を遺言執行者に指定しておく、という選択肢もあります。

どの方式を選ぶにせよ、特に自筆証書遺言の場合は、様式の不備で遺言書が無効になってしまわないよう、慎重に確認しながら作成されることをお勧めします。

まとめ

お子さまのいないご夫婦の相続について、要点を整理します。

  • (1)お子さまがおらず、ご両親もすでに亡くなっている場合、配偶者と兄弟姉妹(や甥・姪)が相続人になることがある
  • (2)遺言書がないと遺産分割協議が必要になり、残された配偶者の負担が大きい
  • (3)兄弟姉妹には遺留分がない(民法第1042条)ため、「全財産を配偶者に」という遺言がそのまま実現する
  • (4)遺言書は、ご自身の希望を残すと同時に、残された配偶者を守るための備えになる

なお、配偶者にどのくらいの財産が渡るか、どのように配分するかは、相続税にも関わってきます。税金面での有利・不利まで含めてトータルに検討されたい場合は、税理士にもご相談されると安心です。当事務所でも、必要に応じて連携する税理士の先生におつなぎしています。

遺言書を書くというと、身構えてしまう方もいらっしゃいます。ですが、お子さまのいないご夫婦にとっては、元気なうちに一通用意しておくだけで、残された大切な方の負担を大きく減らすことができます。気になることがあれば、どうぞお元気なうちに、早めに専門家にご相談ください。


今回はここまでとなります。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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