※本記事の作成にあたり、文章の構成・推敲等に生成AIの支援を受けています。記載されている法令や制度等の内容については、執筆時点の情報を基に筆者自身が責任を持って確認・監修を行っております。
こんにちは。
今回は、借金(債務)を特定の相続人だけに相続させる旨の遺言書を残したとき、債権者との関係でどうなるかについて書いてみたいと思います。
ここで言う「債務」とは、簡単に言えば借金のことです。
まずは事例で考えてみます
次のようなケースを想定してみます。
- 債務(借金)合計:300万円(債権者A)
- 相続人:子ども3人(長男・次男・三男)
- 遺言書あり:「上記債務300万円を長男に相続させる」
この場合、300万円の借金の返済義務は、どうなるでしょうか。
相続人の「内部」と、債権者との「外部」は別に考える
結論から言えば、相続人どうしの内部関係と、債権者との外部関係を分けて考える必要があります。
相続人の間(内部関係)では
相続人3人の間では、遺言書のとおり、長男が債務300万円を相続することになります。
このような「相続させる」旨の遺言は、一般には遺産分割方法の指定と解されますが(最高裁平成3年4月19日判決)、相続債務について特定の相続人に相続させる内容が含まれている場合は、相続分の指定としての効果を伴うものと処理されます(最高裁平成21年3月24日判決)。
債権者Aとの関係(外部関係)では
一方、債権者Aとの関係では話が変わります。
平成30年の民法改正で新設された第902条の2が、まさにこの場面を規定しています。
民法第902条の2(抜粋)
被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。
少し難しい条文ですが、要するに、債権者Aは遺言書の内容に縛られず、法定相続分に従って各相続人に請求できるということです。
今回の事例では、子ども3人の法定相続分は平等に3分の1ずつですから、債権者Aは、
- 長男に100万円
- 次男に100万円
- 三男に100万円
をそれぞれ請求することができます。
ただし、条文のただし書にあるとおり、債権者Aが「遺言書どおりで構いません(長男に全額を請求します)」と承認することも可能です。その場合は、遺言書のとおりの扱いになります。
いずれにしても、主導権は債権者Aが握っているという点を押さえておく必要があります。
債権者に弁済した後の、相続人間の精算
債権者Aに対して、次男と三男がそれぞれ100万円を弁済したとします。
本来であれば長男がすべて負担するはずだった債務ですから、次男・三男は長男に対して、立て替えた分の支払いを求めることができます(求償)。
わざわざ「債務を長男に相続させる」と遺言書に書いているということは、その裏返しとして、それなりの財産も長男に残されているケースが多いはずです。その場合は、遺産分割全体の中で調整するのが自然な流れになります。
生前にできる備え
遺言書だけでは債権者に対抗できないので、できれば次のような備えも合わせて検討しておくと安心です。
- 債権者との事前協議
生前のうちに債権者に事情を説明し、相続発生時に特定の相続人へ債務を集中させる方向での協力を求めておく方法です。正式な合意書までは難しくとも、話をしておくこと自体に意味があります。 - 資産と債務をセットで設計する
債務を相続する相続人に、弁済の原資となる財産(不動産、預貯金、生命保険金など)もあわせて残す遺言内容にしておきます。特に抵当権付きの住宅ローン債務のような担保付き債務であれば、不動産を相続する人に債務を集中させる形を、債権者も承認しやすい傾向があります。 - 遺言執行者を指定しておく
相続人間の調整や債権者との連絡・交渉をスムーズに進めるため、遺言執行者の指定が有効です。
相続発生後の選択肢
相続が発生した後も、債務を特定の相続人に集める方法はあります。代表的なのは次の2つです。
- 免責的債務引受(民法472条)
引受人となる相続人だけが債務を負い、他の相続人は完全に免責される方式です。ただし、債権者の同意が必要で、引受人の返済能力によっては同意が得られにくいこともあります。住宅ローン債務などで使われる実務的な手法です。 - 重畳的債務引受(併存的債務引受)(民法470条)
元の債務者(=法定相続分に応じて債務を相続した各相続人)と、引受人が連帯して債務を負う方式です。債権者にとって不利益のない内容のため、承諾を得やすい傾向があります。ただし、引受人の返済が滞れば、他の相続人にも請求が戻ってくる可能性があります。
どちらを選ぶかは、債権者の態度、引受人の資力、他の相続人の意向などを踏まえて判断することになります。
まとめ
- 「債務を長男に相続させる」と遺言書に書いても、債権者との関係では法定相続分どおりの請求が可能(民法902条の2)。
- 主導権は債権者にある。遺言書は相続人間の内部関係を定めるもの、と割り切って考える。
- 債務を残す可能性がある場合は、遺言書だけに頼らず、生前の債権者との協議や、資産と債務のバランスを考えた遺言設計、そして相続発生後の債務引受という選択肢も視野に入れておく。
自分の債務を相続人に残さざるを得ないときは、以上の点を頭に入れておかれると良いかと思います。
今回はここまでとなります。最後まで読んでいただきありがとうございました。
当事務所では、障害年金のご請求や成年後見、遺言・相続といった「人生の転機」に関わる手続きをサポートしています。ブログを読んで少しでも気になることやご不安なことがありましたら、どうぞお気軽にご連絡ください。
それでは失礼いたします。
