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社会保険労務士・行政書士の宮腰です。ものを書くのが好きで始めました。マイペースで投稿していきますので、よろしくお願いいたします。

2026年4月24日金曜日

相続制度と年金制度の配偶者

※本記事の作成にあたり、文章の構成・推敲等に生成AIの支援を受けています。記載されている法令や制度等の内容については、執筆時点の情報を基に筆者自身が責任を持って確認・監修を行っております。


相続制度と年金制度で「配偶者」の意味が違う?
――知っておきたい内縁関係の落とし穴

こんにちは。
今回は、「相続制度と年金制度における配偶者の違い」について書いてみたいと思います。

同じ「配偶者」という言葉でも、相続の場面と年金の場面では、その意味合いがまったく異なります。
特に、法律上の婚姻届を出していない、いわゆる内縁関係(事実婚)のご夫婦にとっては、この違いが大きな影響を及ぼすことがあります。

まず前提を整理します。

1.相続制度では、法定相続人となれるのは法律上の配偶者(婚姻届を提出している者)のみです。事実上の婚姻関係にあった者(いわゆる内縁の配偶者)は、法定相続人に含まれません。

2.年金制度では、遺族基礎年金や遺族厚生年金の受給権者に、事実上の婚姻関係にあった者も含まれます(一定の要件を満たす必要があります)。

それぞれ、もう少し詳しく見ていきます。


1.相続制度では、内縁の配偶者は「相続」できない

法律上の配偶者でない以上、内縁のパートナーは法定相続人にはなれません。
したがって、被相続人の財産を当然に承継することはできないということになります。

もし、内縁のパートナーに自分の財産を残したいと考えるのであれば、「遺言書」を作成して「遺贈」するというプロセスが必要になります。

なお、以下では税制の話にも触れますが、私は税理士ではございませんので、あくまで制度の概要としてのご説明になります。個別の税額計算や具体的な税務手続きについては、税理士さんにご確認いただくのが確実です。

さらに、税金の面でも不利になります。
相続税には「配偶者の税額軽減」(相続税法19条の2)という大きな優遇制度がありますが、ここでいう配偶者も法律上の配偶者に限られますので、内縁の配偶者には適用されません。
加えて、法定相続人以外が財産を取得する場合は、相続税が2割加算される仕組みになっています(相続税法18条)。

また、他に法定相続人(お子さんやご兄弟など)がいる場合は、遺留分の問題も含め、いろいろと面倒事に巻き込まれる可能性があります。

相続の怖いところは、相続人が(基本的には)何の苦労もせず被相続人の財産を受け取れるという点にあります。
表現に問題があるかもしれませんが、
「貰える物は貰っとけ」
と考える相続人もいらっしゃいますし、それが相続で面倒な事(いわゆる争続)になってしまう理由の1つではあります。

こうした面倒事を避けるためにも、生前に準備や根回しをしておいた方が良いケースは多いように思います。


2.年金制度では、内縁の配偶者も「受給」できる

一方、遺族基礎年金や遺族厚生年金の受給権者には、事実上の婚姻関係にあった者も含まれます。
根拠となるのは、厚生年金保険法3条2項(国民年金法も同様)で、「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする」と明記されています。

ただし、その証明は請求する側がしなければなりません。

具体的には、概ね次のような要件を満たしていることを示す必要があります。

  • 事実婚関係にあること(お互いに夫婦としての意思を持ち、共同生活を営んでいたこと)
  • 生計維持関係にあったこと(亡くなった方によって生計を維持されていたこと)

そして、これを裏付ける資料として、たとえば次のようなものが使われます。

  • 住民票の続柄欄に「妻(未届)」「夫(未届)」と記載されているもの
  • 健康保険の被扶養者であったことがわかる資料
  • お二人宛の連名の郵便物(公共料金の請求書、自治会の案内など)
  • 葬儀の喪主を務めた記録
  • 同居していた事実を示す書類

さらに、事実婚関係・生計同一関係を裏付ける客観的な証明書類の提出が求められ、書類だけで足りない場合は第三者による証明(民生委員、事業主、近隣の方などによる証明書)で補うこととされています。実務上は、書類と第三者証明の両方を揃えて提出するのが安全です。

法律上の配偶者であれば、多くの場合こうした個別の証明までは必要とされません。法律婚という形式的な担保がない以上、「言った者勝ち」にならないよう、事実関係を客観的に裏づける必要があるためと考えられます。

証明のハードルは決して低くありませんが、要件を満たせば受給は可能です。


3.実際の裁決例――健保では配偶者、でも税法では配偶者ではない

この違いを象徴するような事例があります。

国税不服審判所の裁決例(平成20年10月10日裁決)で、住民票に「妻(未届)」と記載され、健康保険組合においても内縁の夫が扶養配偶者として認定されていた事例について、所得税の配偶者控除は認められなかったというものがあります。

社会保険の世界では「配偶者」として扱われていた方が、税法の世界では「配偶者」として認められなかったわけです。
同じ国の制度の中で、同じ方について、ここまで扱いが違うのかと思わされる事例です。


4.なぜこの違いが生まれるのか――立法趣旨の違い

ではなぜ、同じ「配偶者」という言葉が、制度によって意味を変えるのでしょうか。

これは、それぞれの法律が何を守ろうとしているのか、その立法趣旨の違いによるものと考えられます。

社会保険法(年金法・健康保険法など)は、亡くなった方に生計を支えられていた遺族の生活を保障することを目的としています。そのため、戸籍上の形式よりも、生活の実態を重視します。実質的に夫婦として暮らしていたのであれば、届出の有無に関わらず守る、という発想です。

これに対して、税法は課税の明確性・画一性が強く要請されます。誰が配偶者にあたるのかがケースバイケースで変わると、課税の公平性が保てなくなってしまいます。そのため、法律関係の形式(婚姻届の有無)を基準とせざるを得ないわけです。

同じ「配偶者」という言葉でも、法律の目的が違えば定義も変わる。
これは法制度の構造として、知っておいて損はない視点だと思います。


5.備えとしてできること

内縁関係のご夫婦が、万一のときに備えてできることをいくつか挙げておきます。

(1)遺言書の作成と遺言執行者の指定

相続では「相続」ができないので、「遺贈」の形で財産を残す遺言書を作成しておくことが基本になります。自筆証書遺言でも可能ですが、公正証書遺言の方がより確実です。

そして、遺言書を作成するなら、あわせて遺言執行者を指定しておくことを強くおすすめします。

遺贈の手続きは、不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなど、内縁のパートナーご本人が単独で進めることが難しい場面が少なくありません。不動産の遺贈による登記は、原則として受遺者(もらう側)と相続人全員との共同申請が必要です。他に法定相続人がいる場合、その方々の協力が得られなければ手続きがなかなか前に進まない、ということが起こり得ます。

ここで遺言執行者が指定されていれば、相続人に代わって遺言執行者が受遺者と共同で登記申請を行うことができます。改正民法1012条2項でも「遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる」と明記され、遺言執行者の権限が明確化されました。これにより、相続人一人ひとりから協力を取り付ける必要がなくなり、内縁のパートナーの負担が大きく軽減されます。

なお、受遺者ご本人を遺言執行者に指定することも可能で、その場合は事実上ご本人だけで手続きを進められます。預貯金の解約や払戻しについても、遺言執行者が窓口となって手続きを進めることができます。

遺言執行者には、信頼できるご親族や、弁護士・司法書士・行政書士などの専門家を指定することができます。内縁関係のケースでは、法定相続人との利害が対立しやすいため、中立的な立場の専門家を指定しておく方が、結果的にスムーズに進むことが多いと考えられます。

(2)生命保険の受取人指定

生命保険金は受取人固有の財産として扱われるため、受取人に内縁のパートナーを指定しておけば、相続財産とは別の形で財産を残すことができます(ただし、保険会社によっては内縁の配偶者を受取人に指定できる条件があります)。

ただし、税務面では注意が必要です。法定相続人が生命保険金を受け取る場合には「500万円×法定相続人の数」という相続税の非課税枠が使えますが、内縁の配偶者はこの非課税枠の対象になりません(さらに、前述の2割加算の対象にもなります)。民法上は「受取人固有の財産」として扱われる生命保険金も、税法では別の扱いになる――ここでも「配偶者」をめぐる制度の違いが顔を出します。

(3)遺族年金に備えた資料の整備

将来の遺族年金請求を見据えて、日頃から生活の実態を示す資料を整えておくことが有効です。具体的には、住民票の続柄欄に「未届」の記載をしておく、連名の郵便物を残しておく、などが挙げられます。

中でも特に強力なのが、健康保険の被扶養者認定です。被扶養者として認定されているということは、その時点ですでに「事実婚関係にある配偶者」として公的に認められていることを意味します。亡くなった後に証明するのではなく、生前に「認定されている」という事実そのものが、遺族年金請求時に強い証拠となります。

(4)周囲への説明

第三者証明が必要になる場面を想定し、日頃からご近所や親族にお二人の関係を伝えておくことも、いざというときの助けになります。


まとめ

最後に、本記事の結論をシンプルに整理します。

1.相続制度では、内縁の配偶者は法定相続人ではない。
→ 「相続」はできないが、「遺贈」は可能。
→ 税法上も不利(配偶者の税額軽減なし、2割加算あり)。

2.年金制度では、内縁の配偶者も受給権者になりうる。
→ 要件を満たせば遺族年金の「受給」は可能。
→ ただし、事実婚関係と生計維持関係の証明が必要。

私の実務経験の中にも、財産の相続はできなかったけれど、遺族年金はきちんと受給できたという方が時々いらっしゃいます。
法律婚でないからといって、すべてが閉ざされているわけではありません。
一方で、相続については事前の備えがなければ、大切な方に何も残せないことにもなりかねません。

内縁関係で長く連れ添っていらっしゃるお二人こそ、「元気なうちに準備しておく」ことの価値が大きい、と実感しています。


今回はここまでとなります。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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それでは失礼いたします。