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社会保険労務士・行政書士の宮腰です。ものを書くのが好きで始めました。マイペースで投稿していきますので、よろしくお願いいたします。

2026年3月9日月曜日

遺産分割協議書作成の必要書類集め

本記事の構成・校正の一部でAI(Claude)の支援を受けています。法令情報については執筆時点(2026年3月)の内容に基づいていますが、最新の情報は各公的機関の公式サイト等でご確認ください。

前回の記事では、遺産分割協議書の作成例と作成時のポイントについて解説しました。今回は、その前段階として必要になる「書類集め」について詳しく取り上げます。

遺産分割協議書は、集めた書類の記載を正確に転記して作成するものです。つまり、書類が揃わなければ協議書の作成には取りかかれません。何をどこから集めればよいのか、順を追って解説します。


集める書類は大きく3種類


1.亡くなった方(被相続人)の関係書類

 ① 死亡の記載のある住民票の除票(本籍・筆頭者等の記載のあるもの)
 ② 出生から死亡までの連続した戸籍の全部


2.相続人の関係書類

 ① 住民票(本籍・筆頭者等の記載のあるもの)
 ② 現在の戸籍
 ③ 印鑑証明書


3.遺産分割の対象となる財産を証明するもの

 ① 不動産の登記事項証明書と名寄帳
 ② 不動産の評価証明書又は固定資産税納税通知書(評価額がわかる書類)
 ③ 金融機関の通帳、証書等
 ④ 株の配当金計算書等
 ⑤ 車検証
 ⑥ その他の相続対象となる遺産の関係書類

なお、不動産の登記済権利証(登記識別情報通知)は、遺産分割協議書の作成や相続登記の申請に必須の書類ではありませんが、どの不動産が被相続人の所有だったかを確認する手がかりになります。手元にあれば参考資料として活用してください。また、相続登記を司法書士に依頼する場合、権利証があると登記内容の確認がスムーズに進むため、見つかった場合は一緒に渡すとよいでしょう。


各書類の意味

1.被相続人の関係書類について

①は、被相続人が亡くなったことの公的な証明です。②は、相続人を確定するための書類です。出生から死亡までの連続した戸籍を取得することで、配偶者や子ども(認知した子を含む)の存在を確認できます。なお、兄弟姉妹が相続人となるケース(子も直系尊属もいない場合)では、被相続人本人の戸籍だけでなく、被相続人の親の戸籍まで遡って確認する必要があります。


2.相続人の関係書類について

①と②は、相続人が現在生存していることの証明です。③は、遺産分割協議書に押印する実印が本人のものであることの証明です。


3.財産の証明書類について

これらの書類は、記載された財産が確かに被相続人のものであること、そしてその資産価値を証明するためのものです。

当然ながら、被相続人の残された財産の内容によって必要な書類は変わります。最も一般的な土地・建物・預貯金のパターンであれば、3の①~③が中心となります。


書類集めは大変か

一見大変そうに見えますが、ご両親のどちらかがご存命の場合(たとえば父親が亡くなったときは母親が)、おおむね資産の内容を把握していることが多く、書類集めにそれほど苦労しないケースが少なくありません。そうでなくても、通帳等を確認すれば大体の内容は把握できます。

私自身、父や母が亡くなった際に通帳を精査し、財産の全体像をほぼ把握することができました。

ただし、近年はネット銀行やネット証券、暗号資産(仮想通貨)、電子マネーなど、紙の通帳や証書が存在しない「デジタル遺産」が増えています。こうした財産は、本人以外が存在に気づきにくく、相続の際に見落とされるケースも出てきています。被相続人のスマートフォンやパソコンのメール、アプリの通知なども確認しておくと、思わぬ財産が見つかることがあります。


本当に大変なのは「戸籍の全部」

書類集めの中で最も手間がかかるのは、1−②の「出生から死亡までの戸籍の全部」です。

被相続人が生まれてから亡くなるまでずっと同じ市区町村に本籍があった場合は、その市区町村の役所ですべての戸籍を取得できます。たとえば、本籍がずっと埼玉県吉川市にあった方であれば、吉川市役所に一度行き、「遺産分割協議のために、出生から死亡までの戸籍をすべてください」と伝えれば揃います。

しかし、本籍地が何度か変わっている場合は、それぞれの本籍地の役所から順番に取り寄せる必要があり、かなりの手間と時間を要します。

なお、令和6年3月から戸籍の広域交付制度が始まり、本籍地以外の最寄りの市区町村窓口でも戸籍を請求できるようになりました。ただし、この制度を利用できるのは本人・配偶者・親や祖父母(直系尊属)・子や孫(直系卑属)による窓口での請求に限られ、代理人による請求や郵送請求は対象外です。士業による職務上請求も利用できません。

また、他の市区町村への照会が必要になるため、請求する戸籍の数や本籍地の状況によっては、即日交付されず後日改めて受け取りに行くことになる場合もあります。便利な制度ではありますが、すべてのケースで使えるわけではなく、日数にも余裕を持って利用されることをお勧めします。

書類が揃ったら

必要な書類が揃ったら、協議書の作成に入る前に、次の2つの作業を行います。

(1)相続人の確定
集めた戸籍をもとに、相続人が誰であるかを確定させます。わかりやすく整理するために、通常は「相続関係図」を作成します。前回の記事でも触れた通り、相続人が一人でも欠けていると遺産分割協議は無効になりますので、この段階での確認が非常に重要です。

(2)相続財産の整理・確定
相続の対象となる財産を整理します。通常は「財産目録」を作成し、資産と負債の全体像を把握します。

この段階で、資産よりも負債(借金)のほうが多い場合には、相続放棄を検討する必要があるかもしれません。相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります(民法915条1項)。なお、3か月では判断が難しい場合には、期間内に家庭裁判所へ申立てを行うことで熟慮期間を伸長してもらえる場合があります(同条1項ただし書)。ただし、伸長が認められるかは裁判所の判断によりますので、いずれにしても負債の存在が疑われる場合は早めに調査を進めてください。


相続人と相続財産が確定したら、いよいよ遺産分割協議書の作成に進みます。具体的な書き方やポイントについては、前回の記事で解説していますのでそちらをご参照ください。

遺産分割協議書の作成について

最後まで読んでいただきありがとうございました。