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社会保険労務士・FP行政書士の宮腰です。物を書くのが好きで始めました。マイペースで投稿していきますので、よろしくお願いいたします。

2025年9月19日金曜日

ログインできますか?成年後見人が直面した「ペーパーレス社会の壁」

こんにちは。

今回も生成AIの力を借りて、僕自身の経験を書いていきたいと思います。

「もし明日、あなたが家族の代わりに何かの契約を解除しなくてはならなくなったら…?」

成年後見制度は、判断能力が不十分な方の財産や権利を守るための大切な仕組みです。その専門家である私が、社会の急速なデジタル化との間で生じている、ある切実な問題に直面しました。

今回は、そんな制度と現場の “すき間” から見えてきたお話です。

■「明細はオンラインで」立ちはだかったパスワードの壁

先日、私が成年後見人に就任した方の様々な契約の変更や解除手続きを進める中で、あるクレジットカードの利用明細を確認する必要が出てきました。

しかし、その方は明細書を「オンラインのみ」で受け取る契約をされていたのです。確認には、当然スマホやPCでのログインが必須。ところが、ご本人は意思の疎通が難しい状態で、IDやパスワードを聞き出すことはできません。

仕方なく、通帳の入出金履歴を一つひとつ追い、どのカード会社かを推測するところから始めました。

ようやく見当をつけて電話をかけても、すぐには担当者につながりません。
「〇〇に関するお問い合わせは1番を…」
お決まりの自動音声に案内されるまま、ボタンを押していくものの、用件に合う項目がなく、部署をたらい回しにされる状態。当然ながら、「成年後見人専用窓口」なんてものはありません。

長い時間をかけてようやくオペレーターの方につながると、事情を理解してくださり話はスムーズに進みましたが、そこにたどり着くまでが一苦労でした。

■ 便利さの裏側で。情報が “クラウドの中” に閉じ込められるリスク

この経験を通じて痛感したのは、ペーパーレス化という社会の潮流が、時として支援の妨げになる「情報の壁」を生んでしまうということです。

ペーパーレスは効率的で、環境にも優しい素晴らしい取り組みです。しかし、契約内容や利用履歴といった重要な情報がすべて “クラウドの中” に閉じ込められてしまうと、私たち後見人はご本人を守るための適切な判断を下す材料を失ってしまいます。

特に、急いで支払い停止や契約解除をしなければご本人の不利益になる、という場面では、この「情報にアクセスできない」という問題が致命的になることさえあるのです。

■ 制度を待つ前に。私たちが今すぐできること

「カード会社が成年後見人向けの情報開示窓口を設けてくれれば、もっとスムーズなのに…」

もちろん、社会の仕組みが変わっていくことへの期待はあります。しかし、制度の整備を待つだけでなく、私たち自身ができることも確かにあるはずです。

たとえば、まだ元気なうちから、家族や信頼できる人と最低限のオンライン情報(どの会社のサービスを使っているか、連絡先など)を紙に書き出して共有しておくこと。

エンディングノートや、最近よく聞く「デジタル終活」というと少し大げさかもしれませんが、まずは簡単なリストを作るだけでも十分です。いざという時、その一枚の紙が、あなたや大切な家族を助ける命綱になるかもしれません。

ペーパーレス化が進む今だからこそ、アナログな「紙」と温かい「人のつながり」を大切にすることが、より良い支援につながるのではないかと、現場の最前線で感じています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。